HSP・繊細さん|雑談が苦手な人向け、コツと練習方法(後編)

HSP・繊細さん向けに雑談のコツを解説しています。後編です。

前編は【こちら】

雑談の練習:カウンセリングの場合

それでは、雑談の練習風景をみてみよう。
「雑談が苦手」というKさんとのカウンセリングだ。

「人と話すのに緊張する」Kさんとの雑談練習

「もしよかったら、練習してみます? 雑談の練習」

私の誘いに一瞬ためらったKさんだが、
「せっかくだから、ちょっとやってみません?」
と誘うと「じゃぁやってみます」と、のってきてくれた。

よーし、やるぞ。
私はKさんに合わせて、雑談のシチュエーションを設定する。

・職場の昼休み。同僚たちと昼食を食べているところ
・Kさんは昼食にパンを持ってきた

これでやってみよう。

練習なので、私から話しかけた。
(K:Kさん)

私「パンおいしいですよね〜」
K「あ。そうなんですよ」
私「いつもどこで買ってるんですか?」
K「えっと、駅前のパン屋さんです。本当は家の近所のパン屋さんがおいしくて好きなんですけど、やっぱり朝は時間がなくて、駅前で買ってきてます」

お気づきだろうか、ここまで話せたら上出来である。

素晴らしいポイントはこちら。

Kさんは、私の「いつもどこで買ってるんですか?」という質問に「駅前のパン屋さん」と答えるだけではなく、「本当は家の近所のパン屋さんがおいしくて……」と自分の話をできたのだ。

パンの話にオチがあるとか、爆笑が起こるわけでは全くない。

それでも、自分の話をすることで「はい」「いいえ」だけではわからなかった、Kさんの ひととなりがみえてくる。

・入社5年目のKさん

・入社5年目のKさん、パンが好き。彼女の家の近所にはおいしいパン屋さんがあるけど、朝は時間がなくて駅前で買ってきている

この2つを比べると、後者の方が「Kさんがどんな人なのか」が伝わると思う。

自己開示は小さなことでOK

Kさんが話してくれた
「パンが好き。朝は時間がなくて駅前で買っている」
これこそが「自己開示」である。

相談者さんはよく
「自己開示したいけど、できない」
「自分のことを話すのが難しい」
と言う。

自分のことを話すとき、家族のこととか、踏み込んだことまで話さなくて大丈夫。

パンが好きとか、たまに市民プールに行くとか、本当にちょっとしたことでいいのだ。

「このくらいなら職場の人に言ってもいいかも」と思える範囲で話してみると、相手が自分を理解する手がかりになる。

自分のことを話すと、お互いに安心する

人間は、よく知らない相手を警戒しやすい。
「こういう人だ」という理解の手がかりをもらえると、安心する。

雑談する時、
「私のことなんて、相手は知りたいと思っていないのでは」
「こんなことを話しても、役に立たないし……」
なんて思わなくて大丈夫。

「パンが好き」「休みの日にカフェに行った」など、”ちょっとしたこと”がわかるだけでも、聞き手は安心する。あなたのことが「よくわからない人」ではなくなるのだ。

無理のない自己開示は、お互いの安心感をふやしてくれる。

<安心感がふえる仕組み>

自分のことを、無理のない範囲で話す
 ↓
相手が安心してくれる
 ↓
相手の安心感が伝わってくる
 ↓
自分もさらに安心して、話しやすくなる

私も雑談の練習をしながら、「へぇぇ、Kさんはパンが好きなのか」と新鮮な気持ちになった。

なにせ、カウンセリングでは

「これからの仕事をどうしよう。転職したいけど怖い」
「起業したいけど、情報収集していたら疲れてしまって踏み出せない」
「親との折り合いが悪いのに、経済的に実家を出られない。しんどい」

など重めのテーマをがっつり話す。

その人の本音はわかるものの「やきそばパンが好き♪」みたいな軽い話はあまり出てこないのである。

Kさんとはその後、何度か雑談の練習をした。
二度、三度と練習するたびに彼女は上達した。以前よりも会話で気負わなくなり、

「『頭の中をそのまま話す』って、こんな感じでいいんだなって、つかめてきました」

とうなずいていた。

「自分のことを話せない」Sさんとの雑談練習

また別の日。
「バーで憧れの人に話しかけたい」というSさんと雑談の練習をした。

Sさんは長いことアイドルの追っかけをしている。
せっかくなので「アイドルのライブをみて、その帰りにカフェで感想会をする」という設定で練習することにした。

「それぞれ、好きなアイドルを想像しながら話してみましょうか」

私からそう提案し、Sさんは好きなアイドルを、私は現在進行形で推している韓流アイドルを思い浮かべる。

ちなみにSさんはカウンセリングで「好きなアイドルがいて」という言い方をしており、具体的なアイドル名を明かしていない。
そのため、彼女が誰を好きなのかは謎のままである。

自分で設定しておいてなんだけど、ライブの感想会、いいなぁ。
私もやってみたい。推し友いないんだよなぁ……。

そんなことを思いながら役になりきり、私から話しかける。
(S:Sさん)

私「いやー、ライブめっちゃよかったね!」
S「よかったね!」
私「すごくかっこよかった!」

アイドルにはまって初めて知ったのだが、毎日”推し”をみていると親の気分になる。推しが歌番組に出る時も、パフォーマンスにひたるどころか、子どもの発表会を見るみたいに手に汗握るのだ。

推しの沼にどっぷりつかっているので、つい話に熱がこもる。

私「推すってほんとつらい!こないだ推しが歌番組に出ててね、『音程外さないかな大丈夫かな!?』って途中でハラハラしちゃった!!」

しまった興奮しすぎた。
と思いきや、Sさんがのってきてくれた。

S「わかる!推しも歳取ってきたし、衣装のフィット感が、こう!」
私「わかるっ!今カメラに撮られてるよ、油断しないで目線しっかり、とか思っちゃう!」

念の為に申し上げたいが、私はふだんのカウンセリングで「わかる」と口にすることはめったにない。

相談者さんの抱える、簡単にはわかるはずのない悲しみや怒り、喜び。これらをすこしずつ理解していくのがカウンセラーの仕事であり、軽々しい「わかる」は禁忌である。

それなのに、推しの話に勢いが止まらず「わかる」を連発してしまう。
衣装のフィット感に目がいくの、めっちゃわかる。推しのシャツのシワまで美しいっ。

あー楽しい! 雑談楽しい!

ひとしきり盛り上がり、練習を終える頃には私もSさんも興奮して若干息が上がっていた。

この日、私は「お互いの推しが誰かわからなくても、盛り上がれる」ということを知った。

練習後の変化

さて、後日談である。

アイドルの話で盛り上がったSさんから、その後のお話を聞くことができた。
バーに行ったとき、憧れの人と以前よりもたくさん話せたそうだ。

「固くならずに自分のことを話せました」と嬉しそうに教えてくれた。

よかった、よかった。
雑談のやり方って、学校で習わないから知らないだけで、方法さえわかればなんとかなるんだよね。

パンをテーマに練習したKさんからも、こんなご感想をいただいた。

「カウンセリングの次の日、会社のエレベーター内で話しかけられたのですが、さらっと会話できました!以前だったら言葉に詰まって『うっ』てなってたと思います。ささいなことですが、自分の中ではすごく大きい変化です!

Kさんはその後転職し、より自分に合う仕事についた。

実はKさんは仕事が合わず、転職したかったのだ。これまでは「人と話すのが苦手だし、転職しても新しい職場に馴染めないのでは」とためらっていたが、踏み出すことができた。

転職できた理由は、もちろん「雑談できるようになったから」だけではない。それでも、練習が後押しのひとつになったなら嬉しい。

まとめ:「雑談したくない」気持ちも大切に

ここまで雑談のコツをご紹介してきたが、これらはすべて「もしもあなたが雑談したいと思ったら」の話だ。

キライな相手と雑談する必要はないし、自分のことを話したくないときは、その気持ちを大切にしてほしい。

「この人には/この場では、話したくない」というのは、大事にするべき本音だ。

本音に気づいたら、大切にしよう。

人と一緒にいて疲れるならば、お昼休みはコンビニに行って、ひとりで公園で食べてもいい。
イヤホンをして、好きなYouTubeをみながら食べるなど、ほっとできる世界で休むのも素敵だ。

繊細さん・HSPはまわりからの刺激を受けやすい。

「お昼に同僚と話したいけど、毎日は大変」という場合は

  • みんなと食べるのは週1回にする
  • 体調がよくて、元気なときだけ

など、刺激量を調整することも大切だ。

いつか「雑談したい」と思う日がきたら

未来のどこかで、もしもあなたが「ちょっと雑談してみたい」と思ったら。

「みんなと話してみたい」
「この人になら、自分のことをもうすこし話してみたい」

そう思える相手に出会ったら、このやりかたを参考にしてほしい。

「相手のことがわかる」って、案外おもしろいよ。
話題が浅くても、わいわい話すって楽しいよ。

人はこわくないし、意外と優しい。
あなたが思う以上に、まわりのひとは、あなたの話に耳を傾けてくれるよ。

そんなことが伝わったらいいな、と願っている。

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