自分らしく生きる(3)「イヤ!」と思えないのはなぜ? 感情の育ち方の視点から

<連載:自分らしい人生にシフトする>
(1)自分らしく生きるために必要な、2つのパワー
(2)今の流れに「NO!」と言う場面がやってくる
(3)「イヤ!」と思えないのはなぜ? 感情の育ち方の視点から
(4)「イヤ!」を取り戻す。受け止めてくれる先があれば、本音は出てくる

※この内容を更に詳しく解説したのがこちらの本です。本も併せてどうぞ! hsp
繊細さんが「自分のまま」で生きる本
★Amazon
 
 
前々回、自分らしい人生に移行するには、「イヤだ!」と「自分のため」という2つのがパワーが必要だよ、というお話を書きました。
 
↓こちら
自分らしく生きるために必要な、2つのパワー
 
今回は、自分らしい人生に移行する第一歩として、まずは「イヤだ!」という気持ちを取り戻そう! というお話です。
 
 

 
 
繊細さんたちから相談から受けて思うのは、「イヤだ!」と感じること自体が難しいということです。
 
職場で大変な状況にいるのに、「イヤだ!」と思えないまま体調を崩していくケースが多いのです。
 
・自分を鞭打って働き続けるうちに体調が悪くなり、動けなくなってようやく「こんなにストレスがかかってたの?」と気づく。
・同僚から嫌味を言われたり、ひどい扱いを受けているのに、怒るべきことなのかどうかわからない。
といった具合です。
 

なぜ、こんなにも
「イヤだ!」
「やめろ!」
「おかしいのは私じゃなくて、この環境/相手の方だ」
と思えないのか。
 
理由は大きく2つあります。
 
 
まずひとつは、「自分がダメなんだ」「自分の感覚がおかしいのだ」と思っていること。
 
もうひとつは、幼い頃から「イヤ」を封じて生きてきた、ということです。
 
今回は、2つめ。「イヤ」を封じてしまう仕組みをお伝えしていきます。
 
 

「イヤだ」と思えないのは、なぜか? 感情の育ち方の視点から

 
  
イヤだという気持ちを封じる(抑圧)、と聞くと、「イヤだと感じているのに、感じないように無理やり抑えつける」といったイメージがあるかもしれません。
 
ですが実際には、「あるものを、おさえつける」というよりも、「最初から、ない」「本当にわからない」という感覚に近いです。
 
 
これは私も経験してきたことなのですが、「イヤだ」「やめてほしい」という気持ちは、自動的に「なかったこと」になってしまって、自分では本当に、嫌だと感じていることがわからないのです。
 
でも身体は感じているので、体調に出るのですね。(肌荒れ、胃痛、生理痛がひどくなる、肩こりがひどい、よく眠れない、逆に眠りすぎる、などなど)
 
 
 
ストレスが体に出るまで、あるいは体に出てもなお、「イヤだ!」と思えない・わからないのは、なぜなのか。
 
そのヒントは、感情の育ち方のなかにありました。
 
 
 
子どもの心理療法・家族療法が専門の大学教授、大河原美以さんが、著書のなかで「感情の育ち方」を解説しています。
 
「ちゃんと泣ける子に育てよう」
 

 
 
私は子育てで悩む中でこの本にたどりついたのですが、「あああ、こりゃ繊細さんにどんぴしゃじゃないか!!!」と驚愕しました。
 

特に繊細さんに関連する箇所を要約すると
・感情は、体の生理現象として起こる(生理現象であり、意志の力でなくすことはできない)
・小さな子供にとって、体に起こる感情は未知で不快で、恐ろしいものである
・感情を親に受け止めてもらうことで、自分の体に起こる感情を安全に抱えられるようになる。
・感情を親に受け止めてもらえないと、容易に「感じない」という防衛スタイルを身に着けてしまう
ということです。
 
 
※本を読んでもらうほうが正確なので、以下、引用。
※改行・太字は、武田による。
 

「はらわたが煮えくり返る」とか「腹に据えかねる」という言葉があるように、私たちは強い怒りの感情を身体の反応として感じています。
 
うれしいとき、楽しいときは、身体の中からはつらつとした感覚が湧いてきますよね。
 
怒っているときは、血圧が上がって、顔が真っ赤になって、怒りを抑えようとすると、手が震えたりすることがあるかもしれません。
 
悲しいとき、熱いものがこみ上げてきて、涙がとまらなくなりますね。
 
そういうふうに感情をそのままに感じているときには、うれしい、悲しいという言葉と、身体の感覚とがつながっている状態にあるわけです。
 
-大河原美以著「ちゃんと泣ける子に育てよう」P28

 
 

人は、危険にさらされると、自分の身を本能的に守る力をもっています。
 
心にも、自分の身を本能的に守る力があります。それが、防衛というものです。
 
幼い子どもが、怒りや悲しみや恐怖や不安などの強い感情にさらされたとき、子どもの身体は危険を感じますので、自ずと自分の身を守る防衛本能が働きます。
 
それはどういうものかというと、「感じなくなる」「封印する」という防衛なのです。

 
(略)
 
ネガティヴな感情が社会化されていない子どもは、そのとき、そのときに自分の身にふりかかる感情が何なのか、わかりません。ただただ混沌として不快なエネルギーの塊としてしか経験されません。
 
そのような状態になっている子どもが、自分の危険を回避するためには、「感じなくなる」「封印する」という防衛がとても便利なのです。
 
そして、それは「泣かないでほしい」「ぐずぐずしないでほしい」「怒らないでほしい」という親の願い、期待に応えることでもあるために、容易に達成されてしまうわけです。
 
-大河原美以著「ちゃんと泣ける子に育てよう」P44

 
 

繊細な子供は、親の気持ちに敏感です。「自分がこれをしたら、親が困る、悲しむ」といったことを感じ取っています。
 
・自分が怒ったり泣いたりすると、親が嫌がる
・自分が怒ったり泣いたりすると、親がもたない(親が悲しむ、動揺する…)
・受け止めてもらえない 
となると、悲しみや怒りといった感情を、感じなくしてしまうのです。  
 
 
感じなくなったからといって「ない」わけではありません。
 
感じられなくても、「ある」から、ストレスとして体に出るのです。
 
 
 
子供のころから「イヤだ」という気持ちを封じてきたとして、では今、大人の自分がこれからどうしたらいいの…?
 
長くなったので、次回に続きます。
 
 
◆関連記事

【漫画レポート】心と体がリンクする話。〜泉谷さんトークセミナー

自分らしく生きる(1)自分らしく生きるために必要な、2つのパワー