たまに「死にたい気持ち」が出てくるときは
こんにちは、繊細の森の武田です。
だんだんと暖かくなってきましたね^^
道を歩いていると、いろんなところに花が咲いていますね。

さてさて、タイトル通り、たまに死にたい気持ちが出てくる、という方向けのコラムです。
「実際に自分を傷つけるまではいかないんだけど、たまにふとそう思う」
「死にたかった頃を思い出してしんどくなる」
という方を想定して書いています。
(コラムの最後で補足しているのだけど、がっつり死にたい、実際に現在自傷行為をしている、という場合は、すみやかに専門家に相談するか、心療内科を受診しよう…! 身の安全確保が第一です)
この内容を読むのはしんどそう、ひっぱられるかも、という方は、読まずに画面を閉じてくださいね。マンガとかアイドルとか猫動画とか、楽しいページを開こう!
このコラムは、ふと読みたいと思った時に読むのがいいですよ…!

ではでは、コラムに行きますぞ。
カウンセリングで
「大丈夫ではあるんだけど(実際に行動には移さないんだけど)、たまに死にたい気持ちが出てきます」
「自分を傷つけるところを想像をして怖くなります」
とご相談いただくことがあります。
そういうお話が出たとき、私が頭ごなしに「死んじゃだめ」と言うことは全くなくて
「おお、そうですか。なるほどです」
と耳を傾けます。
どうも日本は、死についての話がタブーになっている気がしますね。
死は、キリスト教だと「神のもとでの安息」みたいな意味合いもあるでしょうし、海外はもっと死について話せる機会があるんじゃないかな。
そして、詳しくは書かないけれど、私自身も死にたい気持ちの経験者です。
もう10年以上前になりますが、危ない時期がありましてね。
なので、そういうときの本当にしんどいあの感じを経験しています。
↑これは「武田も経験者だから、カウンセリングの場でそういう話をしても大丈夫だよ」ということを伝えたかったです。
それで本題なんですが、
「死にたい気持ち」は、ときにコントロールできない強さで出てきますね。
本人はその気持ちに巻き込まれることもあるし、「こんなことを考えちゃいけない!」と封じようとすることもあります。
そういう気持ちが出てくると、本人もびっくりするし、圧倒されてしまうんだけれども、
カウンセリングの場では私も一緒にいますからね。
「死にたい気持ち」を怖がったり封じ込めたりせず、一緒になかみをみてみます。
そういう気持ちが出てくるってことは「気持ちが話を聞いてほしがっている」ということですからね。
相談者さんと武田で、一緒に
「ほうほう、なるほど……? 死にたい気持ちがあるんだね。なにが起きてるんだろう?」
と耳を傾けてみると、なかみは割とシンプルです。
死にたい、が伝えたい内容は、ざっくりおおまかには
「つらい」
「今の状況から逃げ出したい」
あたりでしょうか。
自死対策で有名な松本俊彦氏という精神科医の先生がおられるんですが、先生の著書の帯文、これをぜひ読んでみてほしいです。
——「死にたい」とだれかに告げることは「死にたいくらいつらい」ということであり、もしも、このつらさを少しでもやわらげることができるならば「本当は生きたい」という意味なのである。
(松本俊彦著・もしも「死にたい」と言われたら)
私は危なかった当時、これを言ってくれる人に出会いたかったです。

帯のとおり、死にたいときって「死にたいくらい つらい」ということだよね。
死んじゃだめだとか、そんなのはわかった上で「もう無理」ってなっているわけだから。
だから私は当時、「死んじゃだめ」じゃなくて
「なにがつらい? よかったら『つらい』のなかみを話してみない?」
って言ってほしかったです。
「死にたい」を「つらいんだね」に変換してくれる人がほしかった。
さて、カウンセラーになった今、相談者さんが「死にたい気持ち」を話してくださった時は、そのなかみを一緒にみていきます。
落ち着いてゆっくり話を聞いていると、めっちゃシンプルな願いが出てくることがあって、それは
「休みたい」
「止まりたい」
なんですね。
ーーー
・仕事がしんどすぎて休みたい
・この人と関わるのがしんどすぎて、関わるのをやめたい(=関係を休みたい)
・働けない自分を責めてしまう。でも働くこともできない。気持ちがしんどすぎて、この葛藤を止めたい
・延々と走り続けなければいけない、この生き方を止めたい
ーーー
などです。
死を思うとき、「しんどいこと」はひとつではなく、いくつも重なっています。
仕事の悩みと人間関係の悩み(親子関係やパートナーシップ)がダブルパンチになっているとか、働けない状態にプラスして強い自己否定が重なっている、とか。
悩みは様々だけど、願いはシンプルで
「とにかくもう休みたい」
「止まりたい」
という感じなのです。
この「休みたい」は「仕事を休みたい」などの物理的な意味というよりは、「心を休ませたい」という意味合いです。
心が全然休まらなくてしんどすぎる、という状況ですね。
シンプルな「休みたい」「止まりたい」が、なぜ「死にたい」になるのかというと、
1.なんらかの事情で心身がクタクタになっていて
2.休みたいんだけど『休んでいいよ』って自分に言ってあげられなくて
3.『休むには死ぬしかない!』となっている
ということですね。3ステップ…!!
状況としては、
心を休ませることができなくて、
我慢して耐え続けるか、死ぬかの二択(にみえている)。
ゼロか100か、になっています。
さて、ここまで読んだら一度、大きく伸びをしましょうか。
ストレッチ〜!!
ゆっくり行きますよー!!


なるほど理屈はわかった。そうかもしれん。
じゃぁ、どうしたええねん?
私、今しんどいんやけど?
ですよね。
もしも「死にたい」が浮かんだら、
「そっかぁ。きっと、なにか理由があるんだね?」
と思ってみて欲しいです。
人間の気持ちや行動には、理由があるものです。
わけもなく死にたいのではなく、なにかしら理由があります。きっと、自分自身に知って欲しいこと、伝えたいことがあるんですね。
「休みたい」とか「これがイヤだ」とか。
その理由をみつけて「そっか、そうなんだね」と自分自身に頷いてあげると、気持ちが少ーし落ち着きます。
今すぐ解決できなくても、とにかく自分自身の話を聞いてあげる。
「そっか、そうなんだね。そう思ってるんだね」って。
※理由をみつけるのがしんどかったら、無理に掘り起こさずに、
「あれ、死にたい気持ちが出てるなぁ。ってことは、なにか理由があるんだろうな」
「最近しんどかったもんなぁ、そりゃそうだよなぁ〜」
ぐらいに思っていてね。
巻き込まれずに「へぇぇ、なるほど、今そんな感じなんだねぇ」と、自分の気持ちを遠くから俯瞰する感じです。
死にたい気持ちを「なるほど、そうなのねぇ」と俯瞰すると、これまた少ーし落ち着きます。
(完璧に落ち着けなくても大丈夫! これまでよりも少ーし落ち着けたら、それだけでも、しんどさは全然ちがうからね)

「へぇぇ、今、そんな感じなんだなぁ〜!」と、遠くから眺める。
死にたい気持ちがありつつも、今このブログを読んでくださっているということは、「死にたい」は自分の気持ちの全部ではなく、一部分(=パーツ)ですね。
死にたい気持ちもあるし、そうじゃない気持ちもある、ということです。
人間は、同時に矛盾する気持ちを抱える生き物です。
だから、いろんな気持ちがあってOK。
「死にたい気持ちもあるし、そうじゃない気持ちもある」を、「テーブルの上に、りんごもみかんもある」ぐらいのテンションで受け止めてみます。
「そっか、いろんな気持ちがあるんだね。いいよいいよ、いろいろあるもんだよ〜」って感じ。
死にたい気持ちを、無理やり消さなくて大丈夫です。
「ああ、ここにいるんだね。そうなんだね。いいよ、いいよ」という感じで、声をかけます。
その気持ちに、居場所を作ってあげたいのです。
*
ちょっと専門的な話になりますが、
心理療法のひとつに、自分のなかに矛盾する気持ちがあるとき、それぞれを「別のキャラクター」としてとらえていく、という方法があります(有名なのはIFSという流派です)。
自分のなかには「死にたい」と思っているキャラクターもいるし、死んじゃいけないと思っているキャラクターもいる。
生き方を見直したいと思っているキャラクターもいるし、カウンセラーなんか信じない!と思っているキャラクターもいる……、といった具合です。
それでね、このキャラクター(パーツと呼びます)たちは、みんな、自分のためを思って動いてくれています。
死にたいと思っている子(パーツ)は、「このつらい状況から、自分を助けてやりたい。なんとかしてやりたい」と思っているんですね。
自分のことを深く深く思いやっていて、このしんどさから助けてあげたいんだけど、他に方法を知らなくて「死」をみている。
ヒートアップして「死ぬしかない!」となっている子(パーツ)を落ち着けるには、この子のがんばりを認めてあげます。
がんばりを認めるというのは、「自分を傷つけたいんだね、傷つけていいよ」と言うわけではなくて、その子がどうにかしようとしている、そのがんばりを認めてあげる、という意味です。
「そう思ってるんだね。なんとかしようと思って、がんばってくれているのかな」って。
※このあたりのお話は、興味のある方はIFSの本を読んでみてください。ジェニーナ・フィッシャー先生の「トラウマによる解離からの回復: 断片化された「わたしたち」を癒す」が読みやすいです。でもトラウマの本なので、しんどいときは無理に読まないでね。
ここからはIFSとはちがって簡易版なのですが、もしも、シンプルな願いが「休みたい」なのであれば、
「もしかして、休みたいのかな?」
って自分に聞いてみます。
(止まりたい、のほうがしっくりくるようなら、「止まりたいのかな?」です〜)
そうだよ、っていう感じがしたら、
「そっか、休みたいんだね」
(止まりたいんだね)
と自分自身に言ってあげてください。
だってね、考えてみてほしいんだけど、仕事でも人間関係でもずっとしんどかったら、休みたいよね。そりゃそうだよね。
ヒートアップして「死ぬしかない!」ってなってる子は、自分のがんばりを認めてもらって、願いに耳を傾けてもらえると、すこーし落ち着きます。
すこーし落ち着いたら、
「そっか、休みたいんだね。そうしたら、なにか休める方法はあるかな。休む方法って、死ぬ以外にもいろいろありそうなんだけど……、どんなアイデアがあるか一緒に考えてみない?」
って、休むためのマイルドな方法を探してみたいところです。
とりあえず、5分だけでも猫みたいにのびーっとくつろいでみるのもいいですよね。お茶飲むのも、いいよね…!
こういう話をすると、相談者さんもハッとして
「あー私、死にたいんじゃなくてただ休みたかったんですね」
となったりします。

「休みたい」が願いなら、どうにかして少しでも休ませてあげたい。でも「休めたらこんなにしんどくなってない」ってこともよくあります。だから、
休んでいい、と思えなくても大丈夫。
休むの怖い、と思っても大丈夫。
とりあえず「休みたい気持ちもあるらしいよ」と思っておく、ぐらいでもOKです。
どんな気持ちや考えが出てきても大丈夫。
どんな気持ちも打ち消さず、
「そっか、そうなんだね」
「そりゃそうだよね」
「そう思っていいんだよ」
って言ってあげると、気持ちはずいぶん落ち着きます。
*
こんな風に、しんどい時期の森セッション(カウンセリング)というのは、自分になにが起こっているのかを理解して、武田と一緒に、自分自身に「いいんだよ、大丈夫だよ」と伝えていく時間になります。
「はぁ、しんどかった」ってひと息ついて、気持ちがすこし落ち着いたら、ラクになる方法をひとつずつ試してみよう。
今は心理療法も進化していて、いろんな方法があります。
魔法みたいに、1日でなにもかもが変わるわけじゃないけど、その痛みはちゃんと癒えるし、少しずつ、抱えられるくらいのサイズになっていくからね。
抱えられるくらいのサイズになったら、もうずいぶんと、大丈夫だからね。
私自身、過去に危ない時期を通ってきて、カウンセラーになった今は、こうした考え方でカウンセリングをしています^^
書きたいことはまだたくさんあるのですが、長くなるのでいったんここまでにしますね。
続き、また書きますね〜!
(ここまで読んだら、とりあえずもう一回伸びしよー!)

<補足>
武田がなんでもできる、と誤解が生まれないように補足しますね。
死にたい気持ちが強く出ている時は、原則として、心療内科への受診をお願いしています。
(主治医の先生の許可があり、病院でのカウンセリングと内容が重複しならなければ、心療内科を受診しながら森セッションを受けていただくことも可能です)
「死にたい気持ちが出るくらい追い詰められている」ということは、どこかのタイミングで、生き方や考え方を見直していく必要があるのかもしれません。
一緒に生き方を振り返って、自分がもっとのびのびできる生き方を探していこう、というのも森セッションの役割です。
だけど、インフルエンザで高熱ななか、生き方を見直すのが難しいように、強い不安でいっぱい(=いわば高熱)ななか、精神力だけでなんとかしようとするのは、かなり難しいことでもあります。
「不安でいてもたってもいられない」「何週間も眠れない」といった時は、
・心療内科を受診し、必要に応じて薬の力を借りる
・薬で脳の仕組みに作用して、物理的に不安を和らげながら、カウンセリングで生き方や考え方を振り返る
というのが理にかなったやりかただろうと思います。
私自身、10年以上前になりますが、しんどい時期には薬に助けてもらいました。合わない薬を飲むと大変だけど、ちゃんと自分に合う薬であれば、ずいぶんと心身を助けてくれます。
なにより、死にたい気持ちが強いときは、身の安全を確保するという意味でも心療内科につながっていてほしいです。
危ない時は一時的に入院させてもらったり、入院設備のある大きな病院に紹介してもらうのも大事なことです。使えるものはなんでも使って、とにかく心身の安全を確保しよう。
心療内科や薬を忌避せず、必要に応じて活用してもらえたら、と思っています。
<関連記事>
◼️不安とのつきあいかた
(1)軽い不安への対処法
(2)大きな不安への対処法
・おまけ:「がんばろう」よりまず愚痴である
◼️イラスト版「繊細さんの本」
「どーんと落ち込んだ時の対処法」など、様々なメンタルケア方法を掲載しています。
ぜひぜひ、あわせてご覧ください〜!
(お手元にある方は、49ページです!)

<参考書籍>
コラム内で出てきたIFSについては、こちらの本が参考になります。
「トラウマによる解離からの回復: 断片化された「わたしたち」を癒す」
※トラウマの本なので「読むのしんどい」と思ったら、やめといてね。アイドルとか猫動画とか、楽しいもの見ましょう〜!